「へえー君、ジコカンの生徒なんだ!」そういうと彼、私の隣に座ってた慶大生を押しのけて、無理矢理私のよこに割りこんで来たの。好奇心たっぷりの目で私の方ジロジロ見ながら、 「ジコカンの娘って固いんだよね。」 おっしゃる通り!ジコカンの生徒はアンタにたいなケーハクな男なんて相手にしないんだから!! 私、ホントウはそう言ってやりったかたんだけど・・・・。初めてのコンパでキンチョーしてたの。何も言えずにうつむいちゃたの! 「やっぱりジコカンだね。そんなリアクション、今時の女子大生じゃないモノ。」 もお〜そんなにジコカン、ジコカンって人を天然記念物みたいに!! そんなに珍らしいの?ジコカンの女の子が!! 「オレ、キメた!! ジコカンの女の子とつき合ってるなんて、みんなに自慢できちゃう!!」 バカ!! 女の子をそんなアクセサリーみたいに思ってる男の子なんかと、誰が付き合えますか!私もお我慢できずにこう叫んじゃった!! 「お断りします!! 少なくともジコカンの生徒は、アナタのようなおバカな男の子なんかとは付き合いません!!」 「ほらな、やっぱジコカンだろ?」 途端に店中が大爆笑・・・。私・・。アタマの中が真っ白になちゃて、アッケにとられていた。 それでようやく、みんなが笑ってる理由がわかったら、今度は悔しくて悔しくて・・・。とうとう涙がこぼれちゃったの。だって仕方がないよ!ジコカンは幼稚舎から大学までのテッテーした一環教育、日本でもナンバーワンのいわゆる「お嬢さま学校」。少しくらい世間知らずだって、そんなの当たり前なんだから。プンプン。 |
私は駆け出すように店を出ると、雨の中カサもささずにタクシー乗り場に向かったわ。 「ちょーーーちょっと待ってよ!!」 ニヤけたカオでさっきのアイツが、追いかけて来た。あ〜あ、なんてしつこいヤツ。 「いや〜メンゴメンゴ。キミのカオを見ていると、ちょっとからかってみたくなったんだ。」 アイツはそう言うと、ペロリと舌を出して私のカオをのぞきこんできた。 反省の色・・・ナシ!! 完全にトサカにきてた私は、そっぽを向いたまま、無言でタクシーに乗り込もうとした。と、その時!私の腕をつかんでこう言ってきた。 「でも、お嬢さま。この鉄の馬車には馬がつながれておりませぬ」 私、思わず「プッ」って吹き出しちゃったの。フザけたお嬢さま扱いも、ここまでくれば、堂に入ってる。私、気を取り直して、こう言ってあげた。 「よろしくてよ。時計の針が12時を指すまでは、魔法でこの馬車は走りますの。」 これ以上はヤボ。アイツもそれが分かったらしくて、今度は、ちょぴりオーバーにかしづいて見送ってくれた。 「いつか、アナタにピッタリのクツを探し、参上いたします。」そう言うとアイツ、「タン!」と一回ステップを踏み、きびすを返して、駆け出していった。 本当言うとね、ちょっぴり残念。だってこれまで、まだ一度も男の子とちゃんとしたお付き合い無いんだから。ときどき「ジコカン」のブランドが重荷に感じることもあるわ。 少し濡れた髪の毛を、指で遊びながら車の外を見た。全身イレズミのチンピラがアマンドのネオンに感電していた。
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