毎年、春の陽光差し込む学長室のこの窓から、我校の門をくぐる新入生を見る度に、私は年甲斐も無く胸の高鳴りを感じる。
彼女たちは、青春という、人生の中でもっとも美しく輝く季節を、ここ自己完結女子大で送る。そして、その「青春」の記憶はやがて彼女たちが、この学び舎を卒業し、それぞれの人生を歩み出して、いつかは年老いていこうとも永遠に色あせることの無い、甘美な夢の思い出として胸に残ってゆくのだろう。
満開の櫻が校庭一面を鮮やかな色彩で染め上げる。ハラハラと舞落ちる花びらが誇らしげに、入場する彼女たちを祝福する。どこからか聞こえる美しいピアノの音色は鳥のさえずりと、爽やかなシンフォニーを奏で胸躍らせす彼女たちの足どりを軽やかに誘う。この世の全ての歓びが、輝く光の粒子たちにより、文字通り、ここ自己完結女子大のキャンパスに描き上げられる。そう、それは正に私、自己完結女子大学長、至福のひととき、誰も知らないMYおとぎワールドうっほほ〜い!!
嗚々…悦楽にも似た激しい快楽が私の全身を震わす。額は紅潮し、唇が乾く。次第に瞳が潤んで来るのが自分でも解る。老いた性だけが導びかれるという魔的なまでの妖しい恍惚が背中から薬こうのように染み込んでる─‐─。記憶がとぎれれ─‐─、時間の感覚がつかめない─‐─、いま食べたばかりの昼飯が、また食べたくなる‐‐‐。
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