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 約束の時間を10分過ぎて、ほかに誰も来なかったとしたら。30分前に来ている彼女はいったいどうするか。
 答えは「それ以上待たずに帰る」
 本当に帰ってしまうという。自分に厳しい分、他人にも誠実さを求める。いい加減な姿勢で仕事に臨むことなど許せない。だがそれも、彼女にすればプロとして当然のこと。光月夜也は人一倍強い、プロ意識の持ち主なのだ。 一方、こんな話もある。ロケが終わると、彼女はいつも電車で帰る。たとえ長時間の撮影で疲れ果てていたとしても、自分がそうなら他のスタッフも同じはず。これが 、ロケバスで自宅まで送ってもらったりしない理由だ。 厳しさを求めるばかりでなく、自分と同じくらい、相手の立場を尊重する。彼女にはまわりの景色がよく見えている。自分のするべきこと、立つべき場所をちゃんとわかっていているのだ。

「ナンバー1になりたい」
 デビュー当時、彼女が頻繁に口にしていた言葉だ。女優以前はピンサロ界で店に行列ができるという伝説の存在、文字どおりナンバー1だった。だからAVでもトップ に立ちたい。──クールなようでいて、強い意志も持ち合わせている。自分の目指すものを堂々と掲げ、必ずやそれを手に入れてしまう。97年2月には「第6回東スポ映画大賞主演女優賞」を受賞、夢を見事に実現した。
「とても素直な涙だった」  授賞式のステージを見守っていた、プロデューサーの針生夏樹は振り返る。審査員長のビートたけしからトロフィーを渡された時、彼女の目には涙が光っていた 。声がつまって、受賞の挨拶は言葉にならなかったのだ。仕事では隙を見せない彼女の涙を、見てみたかったと思う。きっと本当に純粋な、温かいものだったに違いない。
写真:「東スポ映画大賞」受賞式にて、ビートたけし氏と光月夜也
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