ちょっとした期待を持ちながらビデオを再生させる。
監督は平安時代の貴族のようなコスチュームに身を包んだ光源氏監督であった。

 「マロは…」という口調には笑ったが、主演の美人は醒めた顔で悪ノリしている監督に付き合っているように見えた。光源氏監督とは、これまでFAプロなどで男優をやっていた山科薫氏だった。
 現在でも、AV制作や風俗関係のライターをやっている。
 当時は、制作サイドも充実させるべくダイヤモンド映像は監督の引き抜きなども激しい時代だった。
 細かい内情は、もはや藪の中だが、山科氏も、村西御大が制作、男優として専属契約を交わしたのであろうと推理する。
 もちろん『大和撫子』でも光源氏と卑弥呼の本番はあったものの、まだ素人意識しかない卑弥呼には、役を作り切った山科氏とのセックスで本領発揮はしなかった。
 この時点での卑弥呼は、ひょっとするとビデオ2、3本で消えてしまいそうな素人もどきAVギャルでしかなかった。


 90年中盤のダイヤモンド映像は、ともかく元気であった。

 松坂季実子も、ややトウが経ったような印象はあったものの健在。
 前出のごとく桜樹ルイが電撃移籍して話題騒然。眼鏡をかけたAVギャル野坂なつみ。ハードコア路線の田中露央沙。巨乳の美雪沙織。御大村西とおるの秘蔵っ子乃木真理子とそうそうたる陣容。
 いかに超A級の美女がデビューしたとしても、前宣伝なしでは話題にのぼることはなかったのだ。
 また、たった1本きりで、すぐに引退してしまうコが多かったのも当時のダイヤモンドの特徴ではあった。
 卑弥呼にしても、デビュー作から2、3作目あたりまでは、そのタイプの〃束の間AVギャル〃ではないか? との懸念があった。実際に、まだ学生であるとの噂もあり、元ミス日本であったことを明かしたのは6作目の『女の生き方教えます』であった。
 これには卑弥呼自身がミス日本の事実をひた隠しにしてきたという理由があったらしい。
 それは親と彼氏バレを避けるべくした防衛手段であった。