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室井祐子……藤 沙月
室井文男……仲根 徹
江崎紀子……井上あんり
桑野順一……夢恋次郎
秋山保夫……本多菊次朗
深  谷……平賀勘一

監督……佐藤俊喜
脚本……小林宏一
撮影……下元 哲
照明……白石宏明
録音……ニューメグロスタジオ
編集……金子編集室
助監督……勝山茂雄

 文男の妻祐子には恋人がいる。スイミングクラブのインストラクター保夫である。祐子は平凡なサラリーマンの夫より保夫を愛していたので、夜も夫と離れたベッドで寝る。ある日、文男は古い上着のポケットから鍵を見つけ、それが祐子が独身時代に住んでいたアパートの合鍵であることを思い出し、その部屋をふたたび訪ねてみるのだが……。
 小林宏一の脚本を佐藤俊喜が演出したこの作品は、愛してはいるが冷たい仕打ちをする妻と暮らす平凡な男と、不倫におぽれる妻の情事を濃厚に描いた愛欲ドラマ。藤沙月が夫婦生活と不倫の情事のあいだで揺れうごく女の生態を熱っぽく表現している。

 祐子は夫の文男の目を盗んでは保夫と情事を重ねていた。保夫は体育館にあるスイミングクラブのインストラクターである。祐子はそのクラブに通ううちに彼と親しくなったのだった。彼女は保夫に抱かれている時がいちばん幸せだった。全身が燃えて、幾度も絶頂の喜悦を味あうことができた。
 夫の文男は平凡なサラリーマンで、趣味といえばフェザープレーンを作ることしかなかった。そんな文男を見ると心はいっそう保夫にひかれ、夜も夫とは別々のベッドで寝ていた。それでもそんな祐子を文男は愛していた。
 ある日、文男は祐子がクリーニングに出した上着を取りに行かなかったので昔の古いスーツを着て出勤した。そしてポケットに鍵が入っているのに気がついた。何の鍵だか覚えていなかったが、電車の窓から建ち並んでいるちいさなアパートを見て突如むかしの記憶が甦った。その鍵は、祐子が独身時代に住んでいたアパートの鍵だったのだ。そのころ彼はその部屋をよく訪れたので、祐子から合鍵を預かっていたのだった。その部屋には二人だけのなつかしい思い出がある。
 翌日、文男は会社に風邪で休むと電話をすると、神田川の傍にあるアパートを訪ねてみた。建物はむかしのままだった。祐子が住んでいた二階の部屋は留守なのか、カーテンが引かれていた。文男は階段を登ると、合鍵で部屋に忍びこんだ。若い女が住んでいるらしく、鏡台には化粧品が並んでいる。押し入れを開けてみると中はきちんと整理されていた。ちいさなタンスには下着類がつまっている。水玉模様のパンティを透かして見たりしてからベッドに仰向けになると、数年前のことが思い出された。この部屋で初めて祐子を求めたとき、彼女は激しく拒んだが、ベッドに抱きあげて愛撫すると唇を重ねながら微笑んだ……と、階段を話しながら登ってくる足音がする。それに気づいた文男は慌ててベッドの下に隠れた。鍵をあける音がして女と男――紀子と順一が入ってきた。男は初めての訪問らしい。やがて喘ぐ声が洩れ、ベッドが激しくきしんだ。長い情事がおわると二人は風呂に行くらしく、洗面器や石けんの音を立てながら出ていった。
 それからも文男は昼間紀子が勤めに行っている留守に部屋へ入り、祐子を知ってからの楽しかった日々を思い出していた。祐子には他にも男友達がいるのは知っていたが、彼が結婚を申しこんだのもこの部屋だった。祐子は断わりはしなかった。二人は服を脱ぐといつもより激しく抱きあった。
 祐子は保夫から沖縄に新設される体育館に転任することを知らされた。私と別れるためにそんな嘘を言っているのだ――祐子はそう思った。しかし彼は真剣な表情で、夫と別れて一緒に沖縄へ来てほしいと言った。祐子は悩んだ。
 数日して出発の日が決まった、君の塔乗券も用意してある、決心がついたら当日羽田に来てほしいという保夫の電話があった。
 夜、祐子は隣のベッドで寝ている夫に声をかけた。どうして私と結婚したの、私が哀れだから、それで同情して結婚したの……?
 それを聞いた文男はある日のことをはっきりと思い浮かべた。あの日、文男はケーキを買って彼女の部屋を訪れた。そしてドアを開けて、意外なことを見てしまった。祐子が手足を縛られ猿ぐつわを噛まされて凌辱されている。男は文男の同僚の深谷だった。逆上した文男はお勝手の包丁を握ると深谷に向かっていった。しかし深谷が体をかわしたので包丁は祐子の首筋をかすめただけだった。深谷はズボンをはくと祐子はお前にやる、と言い捨てて出ていった。
 だから俺は祐子が哀れで結婚したのだろうか。いや、俺は祐子を愛している……。だが祐子は理由も言わずに文男の許から去っていった。そのときから文男の意識は狂ってしまったのかも知れない。彼はケーキを買うと、あの思い出のアパートヘ行った。紀子が洗濯物を干していた。その紀子が彼には祐子の姿に見えた。「頼むから戻ってきてくれ」叫ぶようにすがりつく彼を紀子が押しのけた。文男はよろめくと窓辺に倒れかかり、そのまま転落していった。

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