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北河原奈美子…………谷   ナオミ
娘  由 紀…………   〃
〃 少女時代…………小 港 高 江
北河原敬一郎…………鶴 岡 八 郎
 〃 良 介…………下 元 史 朗
恵    子…………美 川 真 弓

監 督…………渡 辺   護
脚 本…………高 橋 伴 明
撮 影…………柳 田 友 春
照 明…………磯 貝   一
音 楽…………とべないアヒル
編 集…………酒 井 春 二

 美しい人妻が義弟との仲を疑われて、夫である名人気質の能面師に斬殺された。夫婦の間には五歳になる娘がいた。それから十五年経ち二十歳になった娘は、母の死の原因となった叙父から初めて事件の経緯を聞いたが、それは異常ともいえる淫媚な情欲の物語であった。
 能面に微妙な女の表情を生かすための凄惨な女体責め。その苦痛に耐えながら真実の愛を求めた女の業――これは高橋伴明の脚本をベテラン渡辺護が濃厚なセクシータッチで演出した異色ドラマ。肉体派のトップスター谷ナオミが二役で熱演しているほか鶴岡八郎、下元史朗、美川真弓らが共演している。

 深い木立に囲まれた墓の前で中年の僧侶と若い娘が合掌している。娘は由紀、僧侶は北河原良介である。
 由紀の母奈美子は由紀が五歳のとき父の敬一郎に日本刀で斬殺された。由紀も胸に傷を負ったが危うく生きのびることができた。あれから十五年の歳月が流れた。成人した由紀はむかしの約束を忘れずに、母がなぜ父に殺されたのか教えてほしいと良介に頼んだ。良介は静かに話しはじめた。それは無残にも悲しい物語である。
 良介は生まれるとすぐ寺の養子になったが、兄の敬一郎は能面節である父の仕事を継いで彫心堂という店で能面を彫っていた。由紀の母奈美子は寺の境内に捨てられていたのを彫心堂に引取られて育てられ、良介とは幼いときから一緒に暮らしていたが、年頃になって敬一郎と結婚し、由紀を生んだのである。
 良介は敬一郎を師として能面作りに励んだが、激しい性格の敬一郎は容易に良介の腕を認めようとはせず、彼が精根こめて打った面も情け容赦なく地面に叩きつた。その度に良介は割れた面を焼き捨ててくれと奈美子に頼んだ。  ある日、敬一郎は良介に女面の彫り方を教えるために下女の恵子を裸にし、宙吊りにすると全身を縄で縛り上げ、苦悶する被女を凌辱した。苦痛と快楽にゆがんだ表情、それが女の顔だと敬一郎は教えた。別室で幼い由紀を遊ばせていた奈美子は敬一郎がなにをしているかは物音で察していたが、じっと耐えていた。彼女はいつも耐えている女だった。そんな奈美子に良介は「幸せですか」と尋ねたが、彼女は黙ったまま帰っていく彼を見送っていた。良介は片足が不自由だった。
 面打ちとしては優れた腕をもっている敬一は、一方で絶倫の欲情をもつ好色漢だった。妻の奈美子を夜毎責めるほかに恵子とも関係を続けていたが、もう一人の下女真知子にも手をつけて風呂場で犯した。真知子は彼が恵子とも情を通じていることを知りながら積極的に体を投げだした。脱衣場にきてその様子を見た奈美子は激しいショックを受けた。  しかも敬一郵がその真知子を良介の嫁にすると言いだしたので奈美子はいっそう驚きを感じたが、夫に逆らうことはできず命じられるままにその旨を良介に伝えにいった。良介もまた兄の勧めに逆らうことができず、真知子が兄と関係のあることを知りながら結婚を承知してしまった。そんな良介が奈美子には哀れに思えてならなかった。いや、彼女は良介が好きだったし、良介も彼女を心から愛していたのである。
 敬一郎によって豊熟した女にさせられた真知子は夫の良介を濃厚なテクニックで抱いた。その妖しい表情から良介は女面の顔を探ろうとした。二人のからみ合いを盗み見てしまった奈美子は家へ逃げ帰ったが、彫心堂では敬一郎が恵子を抱いていた。奈美子は何かを振り切るように裸になると敬一郎にすがりついた。私を抱いて!
 面打ちに執念を燃やした良介は真知子では満足できず、兄がしたように奈美子に頼んで裸になってもらうと縄で縛りあげて複雑な表情をじっと見つめた。そうやって作りあげた女の面を見た敬一郎は初めて褒めてくれた。だが、弟の傑作を見た敬一郎は異常に興奮して裸身の奈美子を縛りあげ、狂ったように犯した。奈美子は敬一郎と共にこれまで味わえなかった快感を知った。それが彼女には悔やまれた。
 傑作を生みだすために精魂を尽した良介はひどく衰弱していた。その良介を訪ねた奈美子は初めて彼への愛を告白し、二人で死ぬことを決意した。しかし、由紀が無邪気に遊びに来たことでためらううちに由紀を探しに来た恵子に気づかれ、敬一郎に報告されてしまった。奈美子は敬一郎に酷しい折檻を受けた。
 奈美子は懸命に良介との仲が潔白であることを訴えたが、逆上した敬一郎は日本刀を振りあげて彼女を斬った。その刃は奈美子にすがりついた由紀の胸まで貫いた。
 私の人生で心から愛したのは奈美子だけだった。長い告白を聞き終えた由紀は静かに服を脱いで良介の前に立った。「おじさま、私を抱いて。私を母だと思って抱いて……」
 その白い乳房の下には敬一郎から受けた傷跡が残っていた。良介は由紀を抱きしめると静かに体を重ねていった。由紀が裸のまま奈美子の墓へ走り去った後には真紅の鮮血が残っていた。良介はその血を兄が褒めてくれた女面の唇に塗った。女面は奈美子が生き返ったように妖しく微笑していた――。


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