
滑川建設はバブルの崩壊の影響を受けて倒産寸前の状態。家族は全部で六人で、そのうち三人は評判の美人三姉妹。しかし家族の中には血のつながっていない者もいるという少々複雑な家庭である。滑川建設社長で家長の貫太郎は債権者に連日責め立てられるので、ついに一家心中を決めて最後の記念写真まで撮ることにするが、それぞれの都合でなかなか全員が揃わず……。
沢木毅彦・安田健弘の共同脚本を安田健弘が監督したこの作品は、個性の強い家族のちょっと狂った生活を描いた奇妙なホームドラマ。かつてのAVトップスター麻生早苗が主演し、貴奈子、水奈リカらの女優陣のほか、森山龍二、山本竜二、石川雄也らが競演している。

まず滑川一家の家族を紹介しておこう。徳造は80歳で部屋には万年床がある。寝てばかりいるのだ。貫太郎は53歳。滑川建設の社長だがバブルの崩壊で倒産寸前である。長女弥生(25歳)は会社に勤めている。彼女の夫春樹(30歳)は弥生の婿養子である。次女五月(21歳)は社会勉強と称してキャバクラで働いている。妹ミナ(18歳)は高校生だが、ボーイフレンドのマサルと遊び回り、二人は勿論体の関係もあって薬局で姉に頼まれたとウソを言ってコンドームも買っている。
この一家に大変な危機が訪れた。滑川建設に毎日のように債権者が取立てに来るので、生きる希望を奪われてしまったのだ。残された道は一家心中しかなかった。
最後の記念に貫太郎の発案で家族の写真を撮ることになり、家の全景がバックになるよう庭にカメラをセットした。だが寝たきりの徳造はムリだし、弥生は会社から戻らず、ミナは学校から帰っていない。実際はマサルとデートを楽しんでいるのだが……。
婿養子の春樹は元々家族ではないから辞退したい、と言ったが、結婚式のとき「愛する妻と余生を共にします」と誓っていたのでこれもダメ。
弥生はまだ会社なので記念写真に入れなかったと述べたが、実は彼女は同じ会社の中年男とホテルで浮気をしていたのだ。ホテルから出てきたところを、適当なホテルをミナと一緒に探していたマサルは見てしまったのだった。
ようやく安いラブホテルを見つけて入ったマサルとミナは初めて抱擁した。マサルは忽ち絶項に達して発射した。
貫太郎は階段の手すりに首吊り用のナワを五人分ぶら下げた。一人分足らないので春樹は喜んだが、貫太郎は徳造がもう八十歳だからどうせすぐあの世行きだ、と用意しなかったのだ。その徳造のオムツを交換してやっていたミナは、意外な秘密を打ち明けられた。ミナが生まれてすぐ母は死に、その後に徳造の娘が子供を二人連れて戻ってきた。出戻りである。会社の仕事を手伝わせているうちに貫太郎が手を出した。それで仕方なく婿養子にしたのだという。つまり、去年死んだミナのママは本当のママではなく当然姉五月も同じことである。
弥生は浴室で裸体でいるところをマサルから剃刃を突きつけられた。金が欲しいのか体が欲しいのか……。彼女は今夜一家心中することを告白した。そして抱かれて一緒に快感におぼれた。
寝たきりの徳造には大きな秘密があった。戦争中に軍が隠していた金の延べ棒を幾枚も手に入れ、万年床の下の椽(たるき)の下に隠しているのだ。オムツの世話をしていたミナはそれを一枚もらった。徳造は彼女を蒲団の上に寝かせて愛撫し、三十数年振りに交合したが、絶項の快感の中で倒れた。息絶えていた。
弥生は貫太郎の前で全裸になった。股間には毛が生えていなかった。彼女は貫太郎に挑んだ。それを覗き見していた春樹と五月が部屋に飛びこんで貫太郎に怒りを爆発させた。この家の者はみんな狂っている。マサルは剃刃を構えて春樹と五月の前に立ちはだかった。そして二人の関係をバラしたので、弥生は激しいショックを受けた。脅迫された貫太郎は言われるままに弥生を抱き、春樹と五月もセックスを始めた。マサルもその交合の輪の中に入り、狂ったように笑いはじめた。
貫太郎が一家心中の前に寿司を注文したが、その時の様子に不審を抱いた寿司屋が交番に知らせていたので、その日の朝早く警官と寿司屋が様子を見に来た。二人がそっと玄関を開けると首吊り用のナワがまず目に入った。マサルにバックから突き立てられた弥生が這い出してきた。続いて貫太郎が出てきてマサルを強盗だと叫んだ。マサルは警官に連行され、家族は茫然とそれを見送っていた。
徳造の死に顔は安らかだった。ゴタゴタ続きで一家心中は解消。それぞれ自分の生きる道を求めて旅立つことになった。春樹は五月と実家に戻り、落着いたら弥生との離婚の手続きをするつもり。弥生は貫太郎と知らぬ土地で暮らすつもりだが……この奇妙な一家、これからも平穏ではなさそうである。