村上真美………竹村祐佳
村上キヨシ……伊籐猛
久保健二………久保新二
ひろみ…………魔子
沙織………鈴木奈緒
市川………三上寛
タケシ…………井口昇


監督……川村真一
脚本……友松直之
　　 　　　　川村真一
撮影……中本憲政
照明……平岡裕史
音楽……遠藤浩二
編集……酒井正次
助監督……小坂井徹
　　

出産間近い真美はお産の用意に忙しかった。夫の村上はサラリーマンだが、突然帰宅しなくなり、全社も無断で欠勤するようになった。真美に不安な日が続く。その彼女の様子を隣のマンションに住む久保が望遠鏡で覗き見ていた。作家の久保は妊娠中の妻を交通事故で亡くし、自分も足の大怪我で車椅子の生活だった。彼は妊婦に異常な関心を寄せていたが……。 これは妊婦に異常な欲情を覚える男と彼女の夫の乱淫の関係を描き、実際の妊婦が主演したという超異色篇。竹村祐佳、魔子、鈴木奈緒のほか久保新二、三上寛らが出演している。 　臨月の真実は生まれてくる子は女だと決めて真由という名前までつけていた。ベビー用品をあれこれと買い集め、妊婦の専門雑誌を読み、安産のための呼吸法も毎日練習していた。
　そんなある夜、夕食の支度をした彼女は夫の村上が会社から帰ってくるのを待っていたが、彼はとうとう帰宅しなかった。
　翌日、電話のベルが鳴ったので夫からと思って急いで受話器をとった。だが相手は全社の上司市川で、村上は昨日外周りに出たまま社に戻らず、今日も出動していないということだった。会社の車を使っているので、もし事故ならナンバーから全社が分かって連絡が入るはずだから事故の心配はないとも言っていたが真実の顔は青ざめた。
　彼女は前に夫の上着にコンドームが隠されているのを見つけたことがある。夫にはもしかしたら他に女がいるのでは……。真実が不安と心配を打ち明けられるのは、お腹の中の真由しかいなかった。
　そんな彼女の毎日をじっと見つめている男がいた。隣のマンションに住んでいる作家の久保である。彼は二十年前に妊娠中の妻陽子を交通事故で亡くし、その時彼も足に大怪我をして今は車椅子の生活だった。妻に死なれた彼はそれ以来妊娠した女性を見ると異常に興奮するようになり、窓際に車椅子を寄せて真実の姿を見つめるようになっていた。望遠鏡と超指向性のマイクは、彼女の動作もお腹の子に話しかける声さえキャッチできた。もちろん先日の市川と彼女の会話から、材上が家に戻っていないことも知っていた。
　久保は書生のタケシに車椅子を押させて近くの児童公園に教歩にいった際、買物帰りの真実に初めて声をかけた。真実が彼が前から名前を知っている有名な作家だと知り、声をかけられたのがうれしかった。家に帰るとクレジット全社から支払を催促する電話があった。夫には彼女の知らない秘密があるようだった。会社の上司市川がまた訪ねてきて、夫がこのまま欠勤を続けるとそれなりの対処をしなければならないと告げた。市川は彼女を抱きしめて拒むのもきかず体を愛撫した。
　児童公園のベンチで真実が放心したようにぼんやり空を見つめていると、車椅子の久保がタケシに押されながら近づいてきた。事情を知っている久保は、彼女を自分の部屋に招いた。そして、彼女の大きな腹を指で愛撫しようとした。驚いた彼女が立ちあがろうとすると、タケシが背後から両手をつかみロープで縛りあげて目隠しをした。久保は彼女に愛を告白し、服を脱がせてバイブを秘所に挿入した。そして、ホンバン……。
　そのころ、真実の大村上は愛人の若いひろみと会社のライトバンで海沿いの道を走っていた。二人は当てのない旅に出て毎日カーセックスにおぼれていた。車は横須賀近くを走っていた。前方で手を振っている少女がいる。ヒッチハイクらしい。少女の名は沙織。十七歳で、神戸から家出してきたらしかった。母はスナックのママで、沙織は実の父親を知らないのだそうだ。
　ライトバンがオーバーヒートで動かなくなった。もう夕暮れなので仕方なく三人は近くの造船所跡らしい廃墟に泊ることにした。夜、ひろみが荒れはてた事務所でウイスキーの瓶を見つけて上機嫌で部屋に戻ると村上と沙織がからみ合っていた。
　翌日、沙織の姿はなかった。そればかりではなく、村上の財布もなくなっていた。それだけではなく、ひろみは両親から見合いをすすめられているので別れたい、と村上に告白した。車も、愛も、金も失った村上は、悄然と真実の許に戻った。
　真美は黙ったまま彼を見つめていたが、やがて浴室に立つと入浴の準備をしてくれた。寝室で二人は唇を重ね、村上は出産の間近い彼女をやさしく愛撫した。お腹の子が動いているのが分かった。
翌日の朝、村上は許してもらえるかどうか分からないが、あやまってくると言って、会社へ行った。彼は久保の乗った車椅子とすれちがった。