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早坂洋子……岸   加奈子
木村貴子……有栖川 アリス
長坂修二……川 村 青 三
田所 謙……小 林 節 彦
マスクの男…久須美 欽 一
岩  田……池 島 ゆたか
学  生……山 口 賢 二
乗  客……伊 藤   舞

監督・脚本…鈴 木 敬 晴
脚 本………谷 中 康 子
撮 影………稲 吉 雅 志
照 明………斎 藤 久 晃
編 集………酒 井 正 次
助監督………森   淳 一
現 像………東映ラボ・テック

谷中康子と鈴木敏晴の共同脚本を鈴木敏晴が演出したこのドラマは、昼と夜とで別の顔をもつ女のミステリアスな体験を描いたサスペンスタッチの異色作。
 洋子はちいさな運送会社で事務員をしている。通勤には地下鉄を利用しているが、ラッシュ時にはよく痴漢にイタズラをされる。その日もスカートに手がのびてきたので振り返ったが、誰が痴漢なのか判らなかった。

 事務所にいるときの彼女は化粧気のない地味な女だが、帰宅して独りで部屋にいるときはマニキュアをし口紅も塗って美しく装っている。男性体験も豊富だったが、どの男とも一度しか寝たことはなかった。岩田ともそんな関係だった。彼は一度だけ抱いた彼女のアジに夢中になったが、洋子にはどれだけ金を積まれても長くつき合う気持ちはなかった。

 会社の事務員は洋子と貴子だけだった。田所と修二がトラックの運転をしている。田所は洋子の仕事のミスを見つけては難癖をつけオバタリアンには困ったものだと軽蔑していた。そんな洋子をかばってくれるのは修二だった。修二は彼女が好きなのだ。洋子は修二に幼いころの思い出を話して聞かせた。

 いまは夜の街で男を漁っている飲んだくれの母がジェット機の爆音が好きで、幼い彼女をよく基地へ連れていってくれた。そしてあのジェット機に乗ればパパに会いにいけると話していた。そんな思い出があるから、洋子には地下鉄の轟音がジェット機の爆音のように感じられことがあった。

 洋子は新しく知り合った学生とホテルに泊まった。学生は彼女の淫らな姿態をポラロイドカメラに収めた。それを見た彼女は更に興奮して彼を激しく抱きしめた。

 ある夜、修二と田所、貴子の三人は繁華街を飲み歩いた。貴子はひどく酔っていた。田所がよく貴子を誘って昼食にいくのを知っている修二は気を利かせて二人を残して先に帰った。田所は彼女をホテルに連れこんで強引に抱いた。修二は洋子を訪ね、部屋の前でベルを押したが中から応答はなかった。

 事務所に奇妙な電話がかかってきた。相手は電話を受けた貴子に洋子と代わってほしいと言ったが、自分の名を言おうとはしなかった。だが男は洋子のことをよく知っていた。今朝、彼女が生ゴミを出す日なのに燃えないゴミを出したことや、電車の中で痴漢にあってパンティを精液で濡らされたことまで知っていた。

 貴子は洋子に修二を愛していることを告白した。洋子は彼が自分に好意を寄せているのは知っていたが、それを受けいれて一人の男を本気で愛するのが怖かった。だから会社の帰りに待ち伏せしていた修二に冷たくしてしまった。ショックを受けた修二は酒に酔って貴子の部屋にゆき、荒々しく彼女を抱いた。貴子には洋子の身代わりになっているような不安があったが、修二に抱かれる悦びは大きかった。

 洋子の部屋にまたあの男から電話がかかってきた。自宅の電話番号まで知っているのだ。そして、いつも彼女を見ているとも言った。一体、誰なのだろう……。

 いつも誰かに監視されていると思うと毎朝地下鉄に乗るのも不安だった。ジエット機の爆音に似ているので好きだった地下鉄も、彼女の不安を募らせた。彼女の淫らな姿態をポラロイドカメラに撮った学生をホームで見かけて、慌てて反対側のホームに駈けだしたこともある。まさか、あの学生では……。

 走る車内で彼女は突然後ろから腕をつかまれた。振り向くと前にパンティを精液で濡らした、あの痴漢だった。怖ろしくなって前の車両に移り、駅に着くと急いで飛び降りた。そしてトイレに駈けこんで隠れた。足音が近づいてきてドアをこじ開けようとしている。足がふるえた。するとドアの外で争う気配がして「妙なことをするのはやめろ!」という声が聞こえた。あの声だ。電話で聞いたあの声なのだ。ドアの隙間から落ちているウォークマンを拾う手が見えた。それは、いつも田所が耳にかけていたのと同じ物だった。

 いつも私を見守っていたのは、田所だった。私は誰かを待っていた。ほんとうに愛せる人を待ちつづけていた。それは田所だったのかも知れない。洋子は化粧して、部屋で待っていた。ドアのチャイムが鳴った。ドアの外には田所が立っていた。洋子はすべてを打ちつけるように彼の体にすがりついた。
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