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朝顔……………藍 山 みなみ
蓮華……………里 見 瑤 子
小川朝子………友 田 真 希
三宅良一………千 葉 尚 之
益沢和義………西 岡 秀 記
江川孝三………牧 村 耕 次

監 督……深 町   章
企 画……福 俵   満
脚 本……小 松 公 典
撮 影……清 水 正 二
編 集……酒 井 正 次
録 音……シネ・キャビン
助監督……佐 藤   吏
現 像……東映ラボテック
スチール…佐 藤 初太郎

  

娼婦の蓮華は常連客の和義に求愛されるが、それとなく話をかわしながら別の話を始める。それは後輩だった朝顔のことで、彼女は客の良一と恋仲になった。良一は朝顔と一緒になって実家の工場を継いでいきたいと言う。朝顔は喜んで承知したが、良一が再び彼女の前に姿を現すことはなく…昭和初期、娼婦と客との間に芽生えたはかなくも美しい恋…

とある旅館の一室。和義が娼婦の蓮華と交わっていた。遠くから祭り囃子が聞こえてきた。ここでその囃子を聞くのも何度目かであり、それはふたりの関係が長い事を物語っていた。事後、和義は蓮華に金を渡すと、妻と別れたので一緒にならないかと言った。蓮華は何も言わず和義から目を逸らした。和義がその理由を尋ねると、蓮華はある話を始めた。

蓮華と同じく娼婦だった朝顔は客の良一と恋におちた。蓮華は朝顔に「客との色恋は昔からうまくいった試しがなく御法度だ」と話した。しかし朝顔が見せた純粋な笑顔を見て、彼女を止めることはできなかった。

朝顔は行くあてもなくこの旅館へやって来た。先輩の蓮華は朝顔にここでは遠慮はいらないと伝えた。そして朝顔の前で狸寝入りをはじめた。蒲団をどうするかという

蓮華の試しだった。朝顔は蓮華に近くにあった布団を掛けた。その朝顔の優しさを見て彼女は長続きしないと蓮華は感じたのだった。

朝顔の初めての客は初老の孝三だった。反応が薄い朝顔に孝三は不満をぶつけた。怒りのままに手を上げようとする孝三を制したのは隣室にいた蓮華だった。蓮華は朝顔の手を取って去ろうとした。孝三は蓮華に平手打ちを喰わせるが、金はいらないという蓮華の強い眼光に圧倒された孝三は何も言えなかった。蓮華は口内の傷を消毒しながら、股間に入ってくるのは金だと思えばいいのだと朝顔に言った。

その夜、蓮華は朝顔が泣いているので目を覚ました。朝顔は孝三が義理の父親で、彼がその娼館に朝顔を売ったことを告白した。蓮華は自分も実の親に売られたのだと話した。

蓮華は和義にある男女の悲恋話を話した。大きな店の若旦那とお茶屋の娘芸者が愛しあった。ふたりが会える時間は店で線香が消えるまでの間だった。ある日若旦那は店の金を使い込んだことが親にばれ、蔵に閉じ込められた。女は彼に買ってもらった三味線が届いた日に会う約束をしていたが、いつまで経っても彼は来ず、男が蔵を出される直前に死んでしまった。若旦那が女の仏前で線香に火をつけた時、弾き手のいない三味線が女の心を伝えるかのように鳴り響いた……。実はその話は朝顔が良一から聞いたもので、それを朝顔が蓮華に話したのだった。

良一からその話を聞かされた時、朝顔は思わず涙を流した。良一は朝顔に「一緒に父親の工場を継いで欲しい」と言った。朝顔はうれしくて良一の胸に顔を埋めた。蓮華は朝顔からその話を聞き、祝杯をあげたが、人を信じる時には信じ抜く覚悟と裏切られる覚悟の両方が必要なのだと忠告した。

朝顔はずっと良一を待っていた。しかし彼が現れることはなかった。良一は工場に融資をしていた会社の令嬢朝子に誘惑され、彼女に軟禁されていた。彼は自分には決めた人がいると言うが、朝子は良一の父とも話しを付けたと言い、彼を拘束して強引に犯した。朝顔はひたすら良一を待ち続けた。

良一は朝子に言うことを聞くと言って手錠を外させると、油断した彼女の首を絞めた。そして朝顔の元へと急いだ。しかし良一が旅館へ着いた時には朝顔はすでに衰弱し、葬儀も終わった後だった。朝顔は死ぬ間際に寝言のように「奈美」と一言呟いた。彼女の本名だった。良一の目の前には骨壷を入れた白い木箱と彼が朝顔に預けた煙草が置かれていた。

二人がどこへ消えたか、それは蓮華も知らなかった。部屋には煙草の残り香だけだった。良一がした線香の話のように煙草の火が消えるまで、そう願ったのだった。話を聞き終えた和義は、自分は蓮華とのことを諦めないと、便所へ出ていった。彼が戻ると、蓮華の姿はなく、燃え尽きた煙草の吸い殻だけが残っていた。
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