
大胆な痴漢描写のいっぽうで二組の中年サラリーマン夫妻の生活を追い、オジサン族の悲哀を浮き彫りにしたペーソスと皮肉に満ちた作品。女と男の対照的な表情の中に、現代的な欲情の捌けロのありかたを浮き彫にしている。1990年作品。

かつて「マドンナ」という言葉が流行ったことがあった……これはその時代の話。ギャルやオバタリアンは毎日のびのびと生活を楽しんでいるが、元気のないのがオジサンたち。
そのオジサンの一人、園山高志は四二歳。朝出勤するとき、奥さんの明子はまだ熟睡中。しぜん欲望も溜まるのでラッシュ電車の痴漢がお楽しみである。その朝もドアの近くに立っていると若い女悦子が押されてきたので、そつとヒップに手を仲はした。彼女か身動きでないのを幸いスカートをたくしあげてパンティの上から秘所をまさぐったので、悦子は次第に高まってきて吐息を洩らすようになった。
濡れている指先の感触を楽しみながら駅から高志が吐き出されてくると、悦子が彼の服の袖をつかんで痴漢をしたでしょうと迫った。高志はもちろん否定して去ろうとすると、悦子は聞こえよがしに気持ちよかったので続きをしてもらおうと思ったのに残念ね、と呟いた。意外な成りゆきに喜んだ彼は、悦子と手を組んでホテルヘ行った。会社へは、体調が悪いから午後から出社すると連絡した。
浴室から出てきた悦子は、妻もいるに違いない高志のようなオジサンはきっとセックス
も上手だから好きだ、と言って彼の愛撫を受けた。そして、ボツキしたものをインサートされるとうめきなからのけぞり、高志の背中を掻きむしりながら同時に絶頂に連した。
情事がおわると高志は数枚の万札を渡そうとしたが、悦子は一度だけで別れるのはイヤだと言って受取ろうとはせず、アパートの電話番号を教えてくれた。
それ以来、高志は度々悦子と逢うようになり、彼女のアパートで体をからませるようにもなった。彼女の体が忘れられなくなって、妻とは別れるから結婚しようと申しこんだ。が、悦子はこのままでいいと言って断わった。
そんなある日の夜、高志が帰宅すると妻の明子は菓子をつまみながらテレビのお笑い番組を見ていた。彼の夕食の仕度はしてなかった。冷蔵庫から佃煮を出し、炊飯器をみるとご飯は残っていなかった。明子を責めると謝るでもなく食パンがあると答えた。そのうえ自分はテレビを見ながらお茶を入れてほしいというので、我慢できなくなった彼はついに離婚を宣言した。
悦子に逢ってそのことを告げ、改めて結婚を申しこんだが、彼女はこれまで不倫を楽しんできたので、平気で女房を捨てるような男には興味がないと冷たい態度だった。
翌日、彼は明子の前で土下座をして謝り、命じられるままに愛撫のすえに突き立て、果てるとテイッシュペーパーで股間をていねいに拭いてやった。これからも、高志には妻に頭のあがらない生活がつづくことだろう。
渉は三九歳。オジサンである。妻の久美子は21歳。若妻である。共稼ぎなので朝は忙しい。渉は妻の眠っている間に朝食の仕度をする。一緒に家を出ると、電車の中で彼は久美子を抱くようにして片手で秘所をまさぐる。
勤務先が違うので帰る時間はまちまちだが、いつも久美子のほうが遅いので夕食の仕度をして待っている渉は時計を睨みながらいつも心配そうだ。その夜も彼女の帰宅は十一時すぎだった。しかもほろ酔いである。訳を聞くと、部長に付き合えと言われて断われなかったのだという。渉は誘惑されたのでは、と動揺したが、他に女性が三人いたと間いてホツとした。
しかし、その後も久美子の帰宅は遅く、寝室でも疲れているのを理由にセックスを拒むようになった。欲求不満の彼はテレクラで人妻の倫子と知り合い、ホテルに行って濃厚な
愛撫のすえ抱き合った。倫子は一度だけで次の浮気を断わり、以前夫が彼女の素行を興信
所に頼んだので浮気が見つかり離婚騒ぎにまでなった、と告白した。
これを聞いた渉は早速興信所に連絡して若い所員の岩淵に妻の素行調査を依頼した。岩淵は一週間尾行をつづけた結果、久美子は会社でも仕事熱心で浮気の心配はないと報告した。しかし、もし心配ならもう少し調査をつづけると言ってくれた。
ある夜八相変わらず久美子の帰宅が遅いので渉は岩淵に連絡をとった。やがて岩淵から報告が入った。報告は、彼女は今夜は取引先と打合わせをしている、という内容だった。
岩淵は電話を切ると久美子との情事に溺れて行った……。