
深町章が自作の脚本を演出したこの映画は痴漢と復讐の物語をミックスしたユニークな内容。1989年製作―といえばまだバブルの最盛期。当時すでに斜陽産業化していたピンク映画とバブルの派手さ華麗さは無縁だったが、それでも懐かしいあの時代の雰囲気は感じられる。

今日も小遣と誠は満員電車に乗って人を探していた。二人の視線は若い女のヒップに引かれがちである。誠は美幸という女の後ろに近寄ってスカートの下に手をのばしたが、気づいた彼女が大声をあげたので小造が慌ててなかに入って言い繕った。
二人が毎朝この電車に乗るのは痴漢が目的ではない。誠がカタキと狙っている進藤を探すためなのだ。進藤は誠の父が借金で首が回らなくなった弱みにつけこんで母や姉を犯し、そのうえ誠のオカマまで掘って一家を離散させて行方をくらました憎い奴なのだ。それを知って同情した小造が進藤探しに協力しているのだが、誠は進藤のお陰でオカマにされたのを悔やみ今は女を抱きたい欲望に燃えているのだ。小造は誠の心情が判ると同情して、彼に好きなだけ女を抱かせてやろうと決心した。もちろん、小造も女を抱くのが嫌いなはずがない。そして、女をだます手口をあれこれ考えて……。
むかし映画のエキストラをしていた小遣は演技や扮装は得意だし、衣裳や小道具も撮影所で借りられるコネがある。小造は誠に女を取りもつためにまず小公園の一角に占いの店をひろげた。もっともらしく天眼鏡やゼイ竹、算木を並べ、易者姿の小造の傍には助手然とした誠が控えて客の呼び込をしている。だが、誰も見向きもせず通りすぎるばかり。しばらくすると若くて美しい女――優子が近づいてきた。誠がしきりに誘っても無視していたが、小造がタダで見てやると言ったので優子は小造の前に腰かけた。
誠は彼女のバッグを預かるとそっと中を調べ、病院の診察券や健康保険証、預金通帳などをそっと小造に見せた。それを手がかりに小遣は彼女の健康状態や家族関係などを占ってみせた。すべて的中したので優子は彼を信用し、男関係の悩みを打ち明けた。男女関係の将来についてはホクロ占いをしなければ、というもっともらしい言葉に、優子は二人を自分の家へ案内した。
体のホクロを見るには裸にしなければならない。ブラジャーも脱がされて二人に全身を撫で回された優子は次第に燃えてきたので、小遣と誠は交替でセックスにおぼれた。
次に小遣が考えたのはトリコモナス菌という、塗った所がものすごく痒くなる薬の使用。二人は電車の中で由美に痴漢したが、小造は悶えている彼女の秘所にトリコモナス菌の液をすりこんだ。そして彼女が下車すると尾行して家を確かめ、白衣に 保健所の腕章をつけ消毒液の散布器を侍って改めて訪問した。
恐ろしい害虫が異常発生し被害届が出ていると聞いた由美は信用して家じゅうを消毒してもらったが、そのうちに彼女は秘所の痒みに我慢できなくなった。よろこんだ二人は治療と称して、両脚をひらかせて一物を突入させた。由美は二人を離そうとはしなかった。
ようやく女の体が分かってきた誠は、指導してくれた小造を「兄貴」と呼んで尊敬した。小造はとてもよろこんだ。幼い頃から親兄弟と離ればなれになって育った小造は兄貴と呼ばれたことなど一度もなかったのだ。
二人はまた、満員電車の中で痴漢する相手を物色していた。誠はあゆみを狙ったが、小造は彼女に不幸な陰のあるのを感じて誠を制止した。そして、ああいう女は覗き見するに限る、と言って尾行し家の中をそっと覗いた。もう夜になっていた。あゆみは奇妙な体位で男のオモチャにされていた。男の姿は灯の陰になって見えないが変態らしかった。男が動いたので顔が見えた。誠がアッと叫んだ。男は誠がカタキと狙う進藤だったのだ。叫び声に気づいて進藤がガラス戸を開けたので、二人はそっと身を隠した。
しばらくして、二人は巡礼の親娘に変装してあゆみの家の玄関を叩いた。まるで時代劇である。一夜の宿を頼むと、進藤は若い娘も一緒と聞いて玄関を開けた。
白塗りの二人が男と知った進藤は悲鳴をあげたが、小造は誠に代わって恨みつらみのたん呵をきり、誠は尻をまくって「英次郎命」と彫った進藤の名を証拠に見せつけた。そしてたじろぐ進藤を二人がかりで押さえつけ、彼の尻をまくると「マコト命」の入墨がかすかに残っていた。進藤は慰謝料を払うからと謝ったが、小造の手に鋭利なカミソリが光った。進藤の悲鳴と叫びと共に、障子に血しぶきが散り、彼の一物が切られて飛んだ。
今日も小造と誠は満員電車の中で若い女を狙っていた。トリコモナス菌の液が女の股間に塗られ……。