
片岡修二が自作の脚本を激烈かつユーモラスに演出した異色のアクション・ピンク・ロマン。港町を舞台に男と女の激しい感情の爆発を巧妙なアクション&バイオレンス描写をからめて描いている。

バッグを肩に担いだ明日香はとある埠頭に立ってじっと海を見ていた。すると遠くからバイクの響きと共に女の悲鳴が聞こえた。二台のバイクで女を追い回しているのは暴走族ボンバーズのメンバー、キッキとゴン、追われているのは奈々である。二人は鞭で奈々を殴り、彼女が倒れるとバイクを降りて荒々しく犯しはじめた。
明日香は二人にバッグを投げつけてひるんだ隙に二人に躍りかかったが、キッキの鞭でシャツが破れた。その背中には観音像の刺青が鮮やかに彫られていた。明日香は驚く二人をキックで撃退した。
バー「波止場」は俊介と亜紀子の夫婦でやっている小さな店だが、いつも若者たちで賑わっている。そこへドアがあいて服を破かれた奈々と明日香が入ってきた。奈々はこの店の常連だった。事情を聞いた亜紀子は二人を二階に案内して奈々に自分の服を貸してやった。明日香はバッグから着替えを出したが、彼女が破れた服を脱いだ際に亜紀子はその背中の刺青に気がついた。
明日香に行く当てがないことを知った亜紀子はしばらくここに寝泊まりして店を手伝ってほしいと頼んだ。奈々もすすめるので明日香は快く承知した。
シャワーを浴びた明日香は二階に上がってドアを開けた。そこは夫婦の寝室で、亜紀子と俊介がからみあっていた。亜紀子の背中には胡麻姫の刺青が彫られていた。
翌日から店に出た明日香は若い客を相手に明るく働き、夫婦も彼女が気に入ったが、ある夜、ボンバーズのメンバーが店に暴れこんできた。彼らは俊介を殴り倒して亜紀子と明日香を車に押し込んで走り去った。
アジトに連れこまれた亜紀子と明日香は散々痛めつけられてボロボロになるまで凌辱された。バーに行って事件を知った奈々は五年ぶりにこの町に帰ってきた佐伯を探し出して助けを求めた。だが彼は引き受けようとはしなかった。奈々は口汚く罵って帰って行った。独りになった佐伯は酒をあおると、暴走族に連れ去られたという亜紀子のことを思っていた。彼は彼女を愛していたのだ。
バーに戻った奈々から佐伯が頼りにならないと聞いた俊介はナイフを持って飛び出そうとした。奈々が引きとめようとすると佐伯が入ってきて、ギャラを払ってくれるなら腕を貸そうと言ってテーブルのバーボンを飲みほした。話は決まった。佐伯は昔の仲間の沼田から安物のライフルを譲り受けると何やら細工をし、俊介の車でアジトの近くまで行った。そして十五分たったらアジトの前に車を回しておけと言って、単身乗り込んでいった。
まず縛られていた亜紀子と明日香のロープを切って襲いかかるボンバーズとたたかったが、佐伯はライフルを魔子に奪われてしまった。魔子は引き金を引いた。しかし銃弾は飛び出さず銃身が暴発した。佐伯が細工をしておいたからだ。彼は亜紀子と明日香を連れてアジトを脱出、待っていた俊介の車で逃走した。
佐伯は俊介から金を受け取ると店を出て行った。亜紀子は後を追って取りすがり、五年たった今でも愛していると告白した。佐伯も彼女のことを一日も忘れたことはないと言ってくれたが、キスをしただけで立ち去った。
ボンバーズから復讐のための呼び出し状が届いた。俊介はナイフだけを武器に悲壮な覚悟をしたが、明日香は亜紀子のために彼を説得し、奈々に案内を頼んで二人でバイクを約束の場所に走らせた。待ち構えていたボンバーズは女が来たので意外そうだったが、魔子は得意の鞭を唸らせて明日香に迫った。
死闘が続いた。突然、銃声が起こった。佐伯が立っていた。威嚇されてたじろいだ魔子と明日香は佐伯の立会いのもとでふたたびはげしく争ったが、ついに魔子がダウンした。佐伯は治療代として魔子にいくらかの金を渡してどこへともなく立ち去った。
明日香は世話になった俊介や亜紀子に礼を言うと、バッグに荷物を詰めて町を出て行った。見送る奈々は淋しそうだった。
駅に着くと、明日香は滑り込んできた列車に乗り込んだ。空席を見つけて腰を下ろしふと隣に気付くと佐伯がいた。互いに行き先も決めていない二人は顔を見合わせて微笑んだ。二人の新しい旅の出発になりそうだった。