
人間の女そっくりの宇宙人と軍人の運命の出会い、そして時空を超えた夫婦のドラマティックな愛。これは後藤大輔のSFタッチの脚本をベテラン深町章監督が独特なタッチで描き出した異色のエロス編。

一九四五年、終戦間近。誰もいない海で海草を採り歩いている女テル。女の家には男ものの靴が床の間に飾ってあった。夜、テルは靴を股間に押し付けてオナニーに耽った。
翌朝、テルは浜辺に打ち上げられた軍服姿の男、寺田少尉を見つけた。テルが近づくと寺田は敵機の襲撃に遭った幻聴におびえながら意識を取り戻した。寺田はそこがどこかを尋ねた。そこへ同じく浜へ辿りついた山崎伍長が現れた。テルは傷を負った山崎の脚に海草を巻き、二人を家に連れ帰った。
寺田は山崎を寝かせて治療を試みた。テルが患部に手をかざしてエネルギーを送ると膨らみは消えわずかな傷はきれいに消えてしまった。テルは力を使い果たし気絶した。寺田はテルの眠る姿を見守った。
寺田はテルの部屋で一冊の手帳を見つけた。表紙には「平成二年」と書かれていた。いつのまにか寺田は妻初江のことを思い出していた。初江は婿入りした寺田が養子先の家から逃げ出すためか、自分に飽きたので軍医として志願して戦場へ行くのだと思っていた。寺田は否定した。初江はせめて出征の日まで存分に愛していて欲しいと懇願した。ふたりは熱く抱きあった。
夕方になり、テルは寺田に夕食を用意したが、それが好物の海軍カレーだったので驚いた。無口なテルは何も答えなかったが、ふと寺田の耳に女の声が聞こえてきた。それはテルが送るテレパシーだった。テルには人の心が読めた。ようやく言葉を喋りはじめたテルは、ここは地球ではないと意外なことを言った。その頃、客室の山崎の前にミルという若い女が現れた。ミルもまた山崎の心を読みながら、彼が求めるままに体を開いた。
約五十万年前、テルの種族は地球を発見したが、まだ文明の発達していない地球人との接触は諦めた。しかし将来のために時空間移動装置を海中にセットし星の間で行き来できるようにしておいた。その装置を寺田と山崎が作動させこの星に移動してきたというのだ。寺田にはその話が信じられなかった。
寺田が客室へ戻ろうとすると中からミルが出てきて歩き去った。山崎は寺田に不思議な力を持つ海草で一儲けできると話した。テルは風呂に入りながらミルと交信した。ミルは海から地球へ行こうしたようだった。テルはミルが山崎と寝たことを知ると怒った。ミルはテルも地球の男と寝たから自分がいるのだろうと責めた。テルはなにも言い返せなかった。
テルの夫は妻と子を事故で亡くし、自殺するつもりで海に飛び込んだところをこの星に運ばれたのだった。そのうちテルと愛しあうようになり、家を建て、子供が生まれた。その子供がミルだった。だがしばらくすると夫は砂浜に靴と手帳を残してテルの前から消えた。テルは話を終えると寺田に抱いてと懇願した。寺田は誘惑に抗しきれずテルと熱く愛しあった。
テルは戦争がきっかけでこの星の種族は遺伝子操作を行い、科学文化や武器を捨てたが、同時に男子の出生率が下がり、今ではこの星に生きているのは女ばかりになったと話した。移動装置は時間のずれが生じるため、寺田たちの時代からすでに五、六十年の時が経っていた。ミルはこの世界を捨てて新しい世界へ飛び立ちたいと願っていた。山崎は海草を大量に手にし、早く帰ろうと寺田を促した。翌日、二人乗りの移動装置に乗ったのは山崎とミルだった。
二〇一〇年。籠を曵き海草を採って歩いていた寺田は波打ち際に倒れている女を見つけた。顔を覗き込むとなんと妻の初江だった。初江は山崎に話を聞いて死ぬ気で装置に乗ってきたのだと言った。その頃、食事の用意をしていたテルはふと目をあげて家に戻ってきた寺田と初江の姿を見るが……。