春子……………華　沢　レモン
満子……………水　原　香菜恵
黒バラ…………春　咲　いつか
良平……………千　葉　尚　之
石田……………本　多　菊次朗
大山……………牧　村　耕　次

監　督……深　町　　　章
企　画……福　俵　　　満
脚　本……深　町　　　章
撮　影……清　水　正　二
編　集……酒　井　正　次
録　音……シネ・キャビン
助監督……佐　藤　　　吏
現　像……東映ラボテック

土建会社の社長大山は病に伏して寝たきりの生活を送っている。そんな彼の家に若いヘルパーの春子がやってきた。春子には良平という恋人がおり、彼はやもめで金持ちの大山をたぶらかして一千万用意するよう春子に頼む。大山は優しく純粋な春子に想いを寄せ、春子もそんな大山を裏切ることはできず…。
のどかな田園風景を舞台に、死期の迫った男に芽生えた若い娘へのほのかな恋心、そして彼を取り巻く後家や女怪盗といったユニークな人物たちの愛欲模様をベテラン深町章監督が叙情味豊かに描きだす。おなじみの華沢レモン、水原香菜恵、そして新人の春咲いつからが競演している。

　のどかな田舎町。医師の石田が田園風景のなかを自転車で駆け抜けた。彼は土建会社の経営者で今は病気で寝たきりの大山の屋敷へ往診に向かった。玄関に上がると新米ヘルパーの春子が顔を出した。好色な石田は美人の春子を見るや彼女の胸に触った。大山はげっそりとやつれ、もう死期が近いと弱音を吐いた。石田は彼を元気づけ、ひと通りの診察を終えると家を後にした。春子は甲斐甲斐しく大山の世話をした。
石田は後家の満子の家を訪ねた。彼は定期検診と称して満子との逢い引きを繰り返している。二人は激しく求めあった。
かつて大山と関係を持っていた満子は、石田から彼の死期が近いことを聞かされ、彼の家を訪れると、遺産を自分にも分けて欲しいと、預金通帳や株券のありかを尋ねた。大山は春子が食べさせてくれるおかゆをすするだけだった。春子はガラス戸越しに手招きする良平に気づいた。良平は春子の恋人で金の無心に来たのだった。まだここでの給料はもらっていなかったが、春子は渋々持っていた金を良平に渡した。春子が寝室に戻ると既に満子の姿はなかった。春子が食事をすすめるが、大山はもう食べたくないと言った。大山はふと春子のスカートから覗き見える彼女の股間に見入った。
　大山は野原で春子と愛しあう夢を見た。そんな時、屋敷に一陣の風が吹いた。寝室に降り立ったのは女怪盗ベルサイユの黒バラ姐ちゃんだった。かつてガードマンをしていた頃、大山は黒バラを捕まえたことがあった。彼の具合が悪いと知った黒バラは元気づけるためにやって来たのだった。そして彼を誘惑し燃えあがると、股間の中で温めた温泉卵を産み出し大山に食べさせた。それもまた大山のはかない夢であった。
大山は石田を呼び、金をやるからイチモツを勃たせて欲しいと頼んだ。石田はドイツ製の超強力男性ホルモンを取り出し、大山の局部に注射した。大山は激痛にのたうち回った。悲鳴を聞いて慌てて駆け込んで来た春子はその光景に仰天した。
　春子は腫れ上がった大山のイチモツを冷やし一晩中さすってやった。翌朝、大山が目を覚ますと彼の足をまくらに眠っている春子の姿があった。大山はその優しさに打たれた。そして彼女が幼い頃に両親を事故で亡くして施設で育ったという話を聞いた大山は、一生春子の面倒見ることを約束した。そこへ石田がやって来た。大山は思わず石田につかみかかったが、いつのまにか元気に立ち上がって顔色もよくなっていた。どうやら薬は別のところに効いたらしかった。
　良平に呼び出された春子は今月中に一千万の金を用意して欲しいと言われた。その金で自分の店を持ち、今度こそ真面目に生きていくという。良平は大山の家にはそれくらいの金はあるだろうと春子を口説くが、彼女には大山を裏切ることはできなかった。良平は強引に春子を抱いた。春子も燃えあがった。
　大山の病状は回復し、外へ出ることもできるようになった。散歩に出た先で春子は大山に何かを言おうとするが、言い出せなかった。そんなある日、大山が帰宅すると、裏庭から春子の泣き声が聞こえてきた。なかなか金を用意しない春子に良平が腹を立て、彼女を殴った。大山は木刀を手に狂ったように良平を殴りつけた。良平は春子は自分の女だと言い張り、抵抗するが、良平は何度も彼を殴り、一千万くらいの金はいつでもくれてやるから出直して来いと言った。春子は力なく去ろうとする良平を追った。春子にとって良平は幼い頃から施設で共に育った間柄だった。いまさら彼と離れることなどできなかった。良平は泣きながら春子に詫びた。大山はその言葉が本気であることを信じ、二人のために金を用意した。春子を見送る大山の目には涙がにじんでいた。その後すぐ、大山は再び病の床に伏した。石田の自転車が彼の家へと急いだ。