洋子……………華　沢　レモン
梅子……………佐々木　基　子
ゆり……………水　原　香菜恵
川合……………本　多　菊次朗
太一……………白　土　勝　功
藤巻……………茂　木　孝　幸

監　督……深　町　　　章
企　画……福　俵　　　満
脚　本……深　町　　　章
撮　影……清　水　正　二
編　集……酒　井　正　次
録　音……シネ・キャビン
助監督……佐　籐　　　吏
現　像……東映ラボテック

とある温泉町の旅館を舞台に、そこに渦巻く様様な愛と欲望をベテラン深町章監督が濃厚なタッチで描き出した欲情編。人気上昇中の華沢レモン、ベテラン佐々木基子、水原香菜恵らが顔を揃え、お色気を競い合っている。
温泉町で旅館を経営する川合と妻梅子。ある日、二人の前に息子の太一が働く東京にある芸能プロ社長のゆりが現れた。太一が会社の金一千万円を持ち逃げしたので、太一の行方を追ってきたのだった。思わぬ事実を聞いた川合は胸が張り裂けそうになり、太一のような奴はもう息子ではないと涙ぐみながら叫んだ。ゆりは見つけ次第告訴すると冷たく言い放って旅館を後にした。
その頃、太一は布団部屋で従業員の洋子と愛しあっていた。事を終えて廊下を歩いている太一を見つけた川合は彼を捕まえ、庭の植え込みの陰へ押しやると、一千万円をどこへやったと問い詰め、さらには社長に徹底的にシラを切り続けてやるから三百万円よこせと迫った。太一は逆に、父が密かに洋子を口説いて関係を続けていることをネタに口止め料を要求した。川合は突然の頭痛に襲われ屈みこんだ。太一は父に脳に出来る悪性の腫瘍が多いので一度精密検査を受けた方がいいと言った。
その後、梅子は太一を洗濯干し場の物陰に連れて来ると、自分のしたことを反省していないのかと責めた。太一は相手は悪徳プロダクションなのだからいいのだと開き直った。梅子は母親の権利として一千万円を渡しなさいと言った。すると太一は、今度は母と板前の藤巻の関係をネタに口止め料を要求した。
その夜、川合が寝入ると梅子は寝室を抜け出して藤巻の部屋へ向かった。藤巻は梅子を抱きながら、川合が脳腫瘍に間違いないと話した。梅子は川合が死んだら藤巻に店を出させてやると約束し、濃厚な愛欲にひたった。
川合と梅子は太一から金のことを聞き出したかどうかをお互いに探り合った。話をしていると川合が苦しそうに頭を押えたので、梅子は精密検査を受けた方がいいとすすめた。川合は病院へ出かけると、その前を行き来しながらようやく意を決したように中へ入った。その様子を車の中からゆりが見ていた。
旅館に戻った川合は誰も居ない大広間に一人佇んでいた。そこへ藤巻が現れた。川合は突然拳銃を取り出し俺を殺してくれと藤巻に迫り銃口を向けた。藤巻は腰を抜かし、私が悪かったと必死で頭を下げた。川合は客が忘れていったオモチャだと言って銃を放り投げた。藤巻は逃げるようにその場を去った。
川合は洋子を抱き、自分達のことを太一に喋ったのかと訊いた。そこへ物音がし、川合が不審に思うと押入れから太一が出てきた。川合はポケットから財布を取り出し何も言わず太一に渡した。太一が笑みを浮かべながら廊下に出て財布を開けてみると、中には一銭も入っていなかった。
洋子は太一の部屋にあるハンコと通帳を見つけた。買い物に出かけた彼女は病院の山口医師に声をかけられた。山口は昨日川合が検査に来て、その結果悪性腫瘍の心配は全くないと言ったのだが、彼はまるで信じていないようだったと洋子に話した。 ゆりは川合を誘惑して妊娠でもしてしまえば多額の慰謝料を手に入れることができると考え、彼に接近した。川合はどうせ死ぬ体なのだからとゆりを抱いた。川合が旅館に戻ると、洋子が医者の山口から川合の命はそう長くないと聞かされたと言った。川合は愕然とした。
川合は旅館の相続権すべてを洋子の名義に書き換えてきたと梅子と太一に話し、自分は近く死ぬ身なのでやりたいことをやって死にたいと言った。
その頃洋子はゆりに太一がしでかしたことを詫び、一千万の札束の入った封筒を渡した。そして太一は旅館の経営に必要な男だから二度と関わらないでほしいと告げた。 川合は街で山口と出くわし、洋子の話が嘘だったことを知った。慌てて旅館に戻って洋子を問いつめると、洋子はこの旅館はもう私のものにだとあっけらかんと言い、川合を無視してテキパキと仕事を進めた。川合は肩を落としてその場に倒れた。