碇三郎…………なかみつせいじ
遥………………華　沢　レモン
真田竜二………白　都　翔　一
横田美樹………谷　川　　　彩
小島友哉………高　橋　　　剛
田中郁子………林　田　ちなみ
大　　家……かわさきひろゆき

監　督……深　町　　　章
企　画……福　俵　　　満
脚　本……かわさきりぼん
撮　影……清　水　正　ニ
編　集……酒　井　正　次
録　音……シネ・キャビン
助監督……佐　籐　　　吏
現　像……東映ラボテック

アパートの一室で繰り広げられる様々な男女の痴戯……鳥になった男が見つめるその人間模様を深町章監督が濃密なタッチで描く、ファンタスティックでハートフルなエロス・ドラマだ。フレッシュアイドルの華沢レモン、谷川彩、そして久々に登場のベテラン林田ちなみらが出演している。
そのアパートの一室には鳥籠に飼われた鳥がいる。住人の竜二は彼女の美樹が来るので浮かれていた。美樹が訪ねてくると、二人は愛しあった。竜二はこの部屋で一緒に住まないかと美樹に言った。美樹は知り合って一週間なのにそんなことを言う竜二の神経が理解できなかった。竜二はチケット売場で働く美樹を以前からずっと見ていたのだと話した。美樹は戸惑いを感じながら部屋を出ていった。そんな二人の姿を鳥籠の鳥が見つめ、「脈はあると見た」とまるで人間のように心の中で呟いた。
竜二と美樹の関係は続き、美樹は頻繁に部屋へ来るようになった。ある朝、美樹が仕事に出かけようとすると柄の悪い借金取りが竜二を訪ねてきた。竜二は三百万の借金があることを美樹に告白した。美樹は呆れて何も言わず部屋を出た。竜二が後を追うと彼女の姿はなく、部屋を見上げる大家がいた。大家は部屋に来た男を不審がり、遅れている家賃の支払いを催促した。
竜二の部屋にはガムテープで閉ざされた一室があり、大家からそこには入らぬよう言われていた。そして竜二が入居した時には既に鳥がいた。鳥は前に住んでいた若い男と中年女のカップルのことを思い出した。大学生の友哉は年の離れた人妻郁子と不倫関係にあり、この部屋で日夜情事に溺れた。しかし若い友哉にはすぐに新しい恋人が出来、それを知った郁子が問い詰めると、友哉は急変して冷たい態度を取った。郁子は隠していた包丁を友哉に振りかざした。郁子は心中を試みたが果たせず、結局二人はこの部屋を出て行った。
美樹は竜二を訪ね、大金の入った菓子缶を渡すと逃げるように去った。竜二は彼女を追いかけた。美樹は孤独に耐え切れず風俗店で働いていたことを告白し、そんな仕事で貯めたお金は捨ててしまいたかったができなかったと話した。美樹はさよならを言うが、竜二はずっと美樹を待っていると言った。美樹は涙をこらえながら去っていった。部屋に戻った竜二は鳥籠を抱えてぼんやりと座り込んだ。そんな竜二を見つめながら、鳥はかつての自分の姿を思い出していた。勤めていた会社が倒産し、妻と娘に逃げられた三郎は、娘が住んでいたこの部屋で孤独な日々を送っていた。仕事帰りのある朝、彼は道端で意識を失って倒れた遥を助け、部屋に連れ帰り看病した。遥が目覚めると三郎は食事を作ってやり、遥を優しくいたわった。
三郎は布団の中で苦しむ遥を介抱するうちに思わず欲情し彼女を押し倒した。嫌がっていた遥もやがて彼を受け入れた。翌日、眠る遥を残して仕事にでかけた三郎はもう彼女と二度と会うことはないと思っていたが、家に帰ると遥が待っていた。二人の間にささやかな幸福が訪れた。そんなある日、遥が鳥を買ってきた。遥は三郎のそばにいたいからこの鳥になるのだと言い、彼に手紙を差し出すと突然別れを告げた。部屋を出て行こうとした彼女は意識を失って倒れた。遥は癌に侵されていることを知り、自暴自棄になり入院先の病院を飛び出してさまよっていた所を三郎が助けたのだった。やがて遥が意識を取り戻すと、三郎は「遥だけを死なせない」と一緒に死ぬことを決意した。二人はあの開かずの間で睡眠薬を飲んだ。遥の願いとは裏腹に、死んで鳥になったのは三郎だった。遥の生きる可能性を奪った自分への罰だろうと三郎は思った。
竜二の部屋に鳥の飼い主だという若い女が訪ねてきた。遥だった。遥は一命をとりとめて病院に運ばれ、癌の手術を受けて奇跡的に回復したのだった。手術のとき三郎の「死んじゃ駄目だ」という声が聞こえた。三郎にまた会えることを信じながら、「おじさんと呼んでいい？」と、遥は鳥に話しかけた。