洋子……………葉　月　　　螢
真由……………水　野　あ　ゆ
真弓……………風　間　今日子
幽霊……………酒　井　あずさ
朝霧……………本　多　菊次朗
和也……………白　土　勝　功
小室……………大　槻　修　

監　督……橋　口　卓　明
企　画……福　俵　　　満
脚　本……橋　口　卓　明
撮　影……中　尾　正　人
編　集……酒　井　正　次
録　音……シネ・キャビン
助監督……田　中　康　文
現　像……東映ラボテック

　看護婦の洋子はエリート医師の朝霧と結婚し、同時に中古のマイホームも購入する。しかし引越しが済むと不可解なことが次々に起こり、洋子は不気味な幽霊の影に怯える。やがて洋子はそれが過去の忌まわしい事件と関連があることを知って……。
これは幽霊にとりつかれた夫婦の恐怖体験を描くホラーとエロスの異色作だ。葉月螢が主演し、水野あゆ、風間今日子、酒井あずさらが見せるいつもと一味違ったエロスが見物。 　朝霧は大病院の院長の娘と結婚し将来を嘱望される医師だった。しかし医療事故の隠蔽を図ろうとした院長と対立したことで妻との関係も悪化。看護師の洋子と関係を持つようになり、やがて二人は結婚した。その朝、朝霧と洋子は中古で購入したマイホームへ引越してきたばかりだった。洋子は二階から突然大きな物音を聞き、寝室へ入った。積み上げられた段ボールのあいだに両目が真っ黒に塗りつぶされた人形を見つけ悲鳴をあげた。洋子が気味悪がって捨てようすると、朝霧は持ち主が探しにくるかもしれないと強引に彼女から人形を取り上げた。
次の日から早速朝霧は職探しに出かけたが、なかなか働き口は見つからなかった。その夜朝霧は人形を手にしながら人形遊びをする小さな子供のことを話した。別れた妻の元にいる娘真由のことが気になっているようだった。その後、朝霧は眠っていた洋子を執拗に求めた。洋子は昇りつめながら、朝霧の後ろに幽霊の姿を見て驚いた。朝霧が見回しても誰もいなかった。
公園で朝霧は後輩の岡田から、あの医療事故のことで彼は結果的に仲間を裏切ったのであり、自分にはあなたを助けることはできないと冷たく言い放たれた。その後、朝霧は町で娘の真由とばったり会ったが、彼女は「私たちを捨てたのだから放っておいて」と冷たく言い放ち、恋人の和也と共に人ごみに消えた。その後真由は和也とのセックスに燃えあがった。
沈みがちの朝霧が家にいると銀座のクラブ「マックス」のチーママの真弓が集金にやってきた。真弓はなにかの気配を感じてぞっとしたが、居間に入ると朝霧が彼女に抱きついた。まんざらでもなかった真弓はすぐにそれに応えたが、朝霧は彼女を寝室に連れ込むと、なにかに憑かれたように激しく真弓を抱いた。その時「シネバイイノニ」という声が聞こえ、真弓は白いネグリジェ姿で長い髪の幽霊を見た。朝霧が果てると真弓は一目散に逃げ出した。帰宅した真弓が自宅の風呂場に入ると目の前に同じ幽霊が現れた。その日から真弓は行方不明になった。
洋子は居間でイヤリングを見つけ不審に思った。真弓が落としていったものとは知る由もなかった。その後、真弓のことを訊きに刑事の小室が訪ねてきた。先日真弓が集金に来たが持ち合わせがないと言うとすぐに帰ったと朝霧は話した。小室は「またこの家に来ることになるとは」と謎めいた独り言を洩らして帰っていった。洋子は小室の言葉に胸騒ぎを覚えた。洋子はイヤリングを朝霧の目のつくところにさりげなく置いた。夜になるとイヤリングは消えていた。洋子が風呂に入ろうとすると幽霊が現れた。悲鳴を聞いた朝霧が二階から下りてきたがそこには洋子のほかに誰もいなかった。洋子はこの家には何かが居ると訴えた。朝霧は「金も仕事もないのにここを引き払うことなど出来ない」と怒鳴り、洋子は救われない気持ちになった。
洋子は小室と会い、あの家で起こった忌まわしい事件のことを聞いた。母子家庭の母親が引きこもりの娘を殺害し、小室が駆けつけたときには錯乱状態でバラバラになった娘の肉片を集めていたのだった。洋子はその女性みさおの病院を訪ねた。拘束衣を着せられたみさおは洋子がふと漏らした「黒い目の人形という言葉」に反応し、半狂乱になった。
その頃、朝霧は一人家にいた。激しく玄関や壁を叩く音が響いた。それがやむと、今度は真由の声が聞こえた。朝霧はその声に導かれ、魂を抜かれたように幽霊とセックスした。家に戻った洋子はその姿を見て悲鳴をあげた。朝霧はその声で我に返ったが、身動きはできなかった。洋子は急いで居間に向った。幽霊が追ってきた。洋子は人形を見つけだし床に叩きつけばらばらにした。すると幽霊の姿は消えた。しかし彼女が寝室に戻ると朝霧が肉体をバラバラに引きちぎられて死んでいた。
翌朝。洋子が目覚めると横に朝霧がいた。洋子は幸せそうに彼に抱きつき、二人は深く愛しあった。だがそれは儚い夢だった。小室が家に到着すると朝霧の遺体のそばで頚動脈を切って自殺した洋子の死体があった。部屋の片隅には黒い目の人形がもとの形のまま残されているのだった。