戦後間もない頃。ヤクザの檜垣は殺人の罪で服役し出所した。組に向かう途中、弟分の冴島が自分の愛人である真澄の股ぐらを覗いていると思って怒鳴った。しかしその女は頭の弱いパンパンの憐だった。事務所へ戻ると、親分の内藤は無鉄砲に問題を起こす奴は面倒だから消えてくれと金の入った風呂敷包みを檜垣に差し出した。
頭に来た檜垣は冴島に真澄の居所を問いただした。真澄は檜垣の服役中に命を狙われ冴島の兄のところへ匿った。その後兄と恋におち今は一緒に旅館をやっていると冴島は告白した。自暴自棄になった檜垣は事務所を飛び出し、自分が殺めた佐々木の墓参りをした。そこへ憐が現れ、檜垣はこの金をやるから一緒に逃げないかと言った。憐は母親に金を届けるため駆けていった。憐との旅を続ける中、檜垣は飲み屋で幸子と知り合った。彼女は冴島の雇った殺し屋で…。

戦後間もない頃。ヤクザの檜垣は殺人の罪で服役し出所したばかりだった。組に向かう途中、弟分の冴島が自分の愛人である真澄の股ぐらを覗き込んでると思って怒鳴った。しかしその女は頭の弱いパンパンの燐だった。燐は笑みを浮かべ、こうして小さい弟たちを食べさせてるのだと言った。冴島は燐に僅かな金を渡し、親分内藤のもとへ檜垣を案内した。 　事務所へ戻ると内藤は無鉄砲に問題を起こす奴は面倒だからこれを持って消えてくれと金の入った風呂敷包みを差し出した。頭に来た檜垣は冴島を睨み真澄の居所を問いただした。真澄は檜垣の服役中に命を狙われ、冴島の兄のところへ匿われた。その後兄と恋に落ち結婚して一緒に旅館をやってると冴島は告白した。檜垣は冴島を殴った。内藤は檜垣が殺した新興勢力の佐々木は内藤組よりも大きな組と繋がっていたこと、その佐々木の女が今の自分の情婦雪だということを告げた。檜垣は風呂敷包みを手に部屋を出た。 　翌日、檜垣は佐々木の墓参りをした。そこへ燐が現れ、食べ物を差し出して食べないかと微笑みかけた。檜垣は真澄に似た燐を抱きしめ、この金をやるから一緒に逃げないかと言った。燐は母親に金を届けるため駆けていった。その頃、厄介払いしたつもりの親分は雪との情事に溺れていた。雪は檜垣を殺してくれと頼んだ。親分は冴島を呼んで檜垣を殺すよう命じた。 檜垣は燐が客に股ぐらを見せて金を貰っているだけでまだ処女だと知り、人気のない場所で強引に交わった。 　夜の街角にひとりの夜の女が立っている。幸子である。何者かが強引に歩み寄ると、金と薬の包みのようなものを手渡した。 　檜垣と燐が飲み屋で休んでいると幸子が入ってきた。檜垣は美人の幸子にそそられ、誘われるままに近くの宿屋へ場所を変えた。燐を宿屋の前に残したまま檜垣は部屋で幸子を抱いた。 　その後、幸子は檜垣が眠っている隙に酒の徳利に薬を入れた。檜垣は寝たふりをしてそれを見ていた。そうとは知らず幸子は檜垣を起こして酒を勧めたが、檜垣は呑まなかった。「そう言えばこの界隈には幸子っていう腕利きの殺し屋がいるって話だな」と彼は呟いた。そして嫌がる幸子に無理やり酒を飲ませ、「人殺し」と叫ぶ彼女を置いて檜垣は燐を連れて逃げた。 　一方、親分の指示で檜垣が佐々木を殺したことを知った雪は、包丁で彼を刺した。その事実を雪に密告したのは冴島だった。

神社の前で燐は幸子への嫉妬から突然泣き出した。檜垣は思いがけない燐の女心に溜息をついた。彼女は近くに咲いていた花を手にすると、「この花は面影草といって、じっと見ていると会いたい人の顔が見えてくるんだ」と呟いた。 　檜垣は旅館を訪ね真澄と再会した。応対に出た真澄は自分は殺されても仕方がないが主人とあの子だけは助けてほしいと懇願した。奥のほうから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。檜垣はやりきれず燐の手を引っ張って旅館を後にした。そして連れ込み旅館で燐にむさぼりつき、涙をこらえながら彼女を抱いた。檜垣は燐に堅気の生活をさせようと、真澄の旅館で働かせてもらえないか頼むつもりで彼女を連れていった。 　旅館の入り口で殺気を感じた檜垣は燐に神社の前で待っていろと言った。燐が去ると、檜垣は植木の影に隠れていた男に出てくるよう声をかけた。現れたのは拳銃をてにした冴島だった。彼は檜垣が真澄や兄を殺すつもりでここえ来たのだと思い込み、その前に彼を仕留めようと狙っていたのだった。撃たれた檜垣は真澄にもう一度会いたかっただけだと呟いた。 　燐は神社の前で檜垣を待った。と、面影草の奥に大好きな檜垣の顔が見えた気がした。しかし檜垣はとうとう現れなかった。その後、燐はいつものように街角で客に股ぐらを見せて金を稼ぎ、いつまでも檜垣の帰りを待ちわびた。

監　督………深　町　　　章 企　画………福　俵　　　満 脚　本………かわさきりぼん 撮　影………清　水　正　二 編　集………酒　井　正　次 録　音………シネ・キャビン 音響効果……中　村　半次郎 現　像………東映ラボテック スチール……津　田　一　郎

憐・真澄（二役）…麻　　　　　白 親分の情婦…………山　口　玲　子 殺し屋の幸子………水　原　香菜恵 檜垣貞男……………なかみつせいじ 冴島雅人……………山　名　和　俊 内藤…………………かわさきひろゆき