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 詐欺師の菊夫は田舎の旅館の女将さゆりの腹違いの兄になりすまし、旅館にもぐりこんだ。そこへ彼の姉と名乗るよしえが現れたが、実は彼女も偽者で詐欺師だった。二人は共謀して旅館の財産を狙うが、実は幼い頃に菊夫を捨てた父親が…。
 のどかな田舎町の温泉旅館を舞台に、ワルに徹しきれない詐欺師が巻き起こす騒動をベテラン深町章監督が描いた人情エロス編。河村栞、里見瑤子、酒井あずさが共演。


 菊夫は詐欺を繰り返して生計を立てていた。旅館に泊まっては「会社から緊急呼び出しがあった」と書き置きを残して宿代を払わずに早朝に抜け出し、電車には無賃乗車をする。そんな彼がとある田舎のバス停に降り立った。
 ベンチに座っていた爺さんにこの辺に宿屋はないかと声をかけると、爺さんはこの辺の大地主が愛人の娘にやらせている旅館があると話した。その男は東京に妻と子を残してこの地で温泉を掘り当て、愛人に子供を生ませた。やがて愛人は死に今は本人も寝たきりだった。東京の奥さんと子供が見つからないままだと聞いた菊夫は、これだとばかりにその旅館を訪ねた。
 菊夫が旅館に着いた。その頃、部屋では女将のさゆりと板前の祐介が愛し合っていた。菊夫が来たので二人は慌てて布団から飛び出して迎えた。菊夫はさゆりの顔を見るや自分はあなたの兄だと告げた。確かにさゆりの義兄にあたる男は彼と同じ菊夫という名だった。その偶然には菊夫も首を傾げたが、嘘がバレぬよう様子を伺いながらさゆりと話し、菊夫は彼女の父謙造に会った。オーバーな演技で謙造に詫びを言いながら涙を流す彼につられ、さゆりも泣き出した。寝たきりの謙造は菊夫を見て興奮し、何かを言おうとするが、言葉にならなかった。菊夫は「父さんの面倒は僕がみる」と白々しく謙造を抱きしめた。
 その夜、菊夫は仲居のみつこを相手に飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを繰り広げた。菊夫のことを胡散臭く感じた祐介は菊夫が本当にさゆりの兄かどうか、よく確かめたほうがいいとさゆりに言った。深夜、菊夫は帳場に忍び込んで旅館の収支表を盗み見るとひとりほくそ笑んだ。
 翌朝、謙造のもう一人の子で菊夫の姉であるよしえが現れた。彼女の存在など知らなかった菊夫はただオロオロするばかりだった。だが、彼と対面したよしえは「最後に会ったのは三歳の時で、昔の面影はない」と言い、菊夫はうまく話を合わせて泣きながら彼女の手を握った。
 深夜、よしえは密かに帳場に侵入し、帳簿の山を見て何億ものこの家の財産を確認した。それを見た菊夫は彼女の部屋を訪ね、「俺は偽者だ。あんたに惚れた」と言って迫った。お互いの素性を知った二人はそのまま体を重ねた。菊夫の背中には子供の頃に酔った父が暴れてやかんをひっくり返した時にできた火傷の痕があった。よしえは水商売をしていて本物のよしえと知り合い、彼女が病気で死んだので自分がよしえを装ってここへ来たのだと話した。よしえはさゆりを追い出して財産を手に入れる計画を菊夫に持ちかけた。
 よしえは謙造に出されるお粥にこっそりと媚薬を混入した。そのお粥を食べた謙造は突然興奮しそばにいたみつこの体を求めた。みつこは求められるままに寝たきりの謙造のうえに馬乗りになって果てたが、謙造はそのまま気を失ってしまった。よしえは驚いた風を装って責任をさゆりになすりつけ、この家から出て行くよう言い放った。さゆりは自分のたった一人の父親なのだからと涙を流して食い下がったが、よしえは冷たく突き放した。それを知った祐介は「絶対に女将さんを出て行かせません」と憤然とした。
 菊夫の部屋で彼とよしえは愛し合った。それを祐介が覗き見ていた。翌朝、祐介は菊夫に警察に言って欲しくなければこの家から出ていくよう告げた。だが、そこへよしえが包丁を構えて現れた。祐介は縛られて押入れに放り込まれた。その頃、さゆりは涙ながらに謙造に別れを告げていた。それを立ち聞きした菊夫は彼女に同情し、もうこんなことはやめようとよしえに言った。よしえは食い下がるが、彼の心は変わらず、よしえも泣きながら諦めた。
 菊夫は家を出ようとするよしえに、急な仕事で東京に帰られなければならなくなったので父の面倒を頼むと言った。よしえも弟の仕事を手伝うことにしたからと取り繕った。仕事が片付いたらまた戻ってくると約束し、二人は旅館を後にした。祐介はあいつらは偽者だと言った。だが、さゆりは父が言っていた通り、菊夫の背中には大きな火傷の痕があったと話した。
 菊夫はよしえに別れを告げた。よしえは彼のことが気に入ったらしく、一緒についていくと言った。二人は一緒に歩き出した。その頃、謙造はひとり無言で布団の中で涙を流していた。






監 督………深 町   章
企 画………福 俵   満
脚 本………河 本   晃
撮 影………清 水 正 二
編 集………酒 井 正 次
録 音………シネ・キャビン
助監督………佐 藤   吏
現 像………東映ラボテック

菊 夫………岡 田 智 宏
さゆり………河 村   栞
よしえ………里 見 瑤 子
祐 介………白 土 勝 功
みつこ………酒 井 あずさ
謙 造………港   雄 一
ジジイ………広 瀬 寛 巳

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