結婚前に自動車事故で恋人を亡くした智子は不眠症に悩まされている。夫の朝霧との夫婦関係は冷え、彼女は一度だけのつもりで見知らぬ男との情事を経験する。Ｋと名乗るその男は死んだ恋人に似ていた。やがてＫはしつこく彼女の身辺に付き纏いはじめて…。
これは過去のトラウマに付き纏われ不眠症に悩む人妻の、現実と夢の間で起きた恐ろしくワイセツな体験を描くエロティック・サイコ・サスペンス。佐々木基子、佐々木ユメカら人気実力派女優の共演が見もののスリリングな一編だ。

　三年前、智子は恋人の運転していた車がトラックと正面衝突して彼を失った。彼女の夫朝霧は死んだ恋人の親友だった男で、事故の後二人は結婚した。智子は事故の時に見たヘッドライトの記憶が脳裏に焼きついて急に明るい光を見ると意識を失うことがあり、不眠症に悩まされていた。朝霧との夫婦関係は冷え切っており、昔の事故と恋人のことを忘れられない智子に不満を感じてか、彼は部下のみさおと関係を持っていた。
　智子は夫の留守中に出会い系サイトで知り合った男とホテルで会った。彼女はＫと名乗るその男に、作り話だと言いながら自分と夫の関係や過去を語った。そして夫が不倫していることを知っていること、Ｋが結婚前に付き合っていた恋人と似ていることなどを話した。Ｋは一週間後の再会を智子に求めた。
　産婦人科の検査で妊娠を知り、智子は朝霧に話した。だが彼女の表情はどこか晴れないように朝霧には見えた。朝霧は死んだあいつへの遠慮かと問うた。口論になると、智子は朝霧の浮気を問いつめた。朝霧はなにも言えなかった。
　約束の日を智子は守らず、Ｋからなぜ来なかったのかと電話がかかってきた。智子はもう会えないと言うが、Ｋはやがて脅迫するような調子になり、いつもあんたのことを見ている、俺たちはもう離れられないと言って智子を脅えさせた。智子がビルのエレベーターに乗り込むと、背後にＫがいた。乗客が皆降りると、Ｋは智子の肉体を愛撫した。その時、電話のベルの音とともに智子は目覚めた。エレベーターの出来事は彼女の夢だった。受話器をとると無言電話だった。かけたのみさおだった。

智子は電話に脅えながら、いつものように睡眠薬を飲み眠りについた。その夜、突然Ｋが部屋に侵入し、智子の手足を縛って言葉でなぶりながら犯した。Ｋは果てると智子をスタンガンで失神させた。翌朝、智子は一人で目覚めると泣き伏した。 　昼間、家事の途中で居眠りをしていた智子が覚めると、Ｋに犯される彼女の写真がテーブルに置かれていて、彼女を脅えさせた。その夜、眠っていた智子が目覚めるとシャワーの音が聞こえた。朝霧が帰ったと思いバスルームに入ると中にいたのはＫだった。しかしそれも智子の夢だった。バスルームには人影はなかった。ふと気がつくと居間のビデオデッキにテープが差し込まれていた。映っていたのはＫに犯される智子の姿だった。 　夕食の準備を終えた智子は眠気に襲われた。すると、彼女の背後にいつの間にかＫが現れた。智子は彼に包丁を突きつけた。Ｋはまるで智子の昔の恋人の魂が自分に乗り移ったようだと言い、一緒に行こうと彼女を手招きした。智子はＫを拒絶し、包丁を振りかざした。家への電話が繋がらないので心配した朝霧は、みさおに止められるのも無視して家路を急いだ。彼が部屋に入ると、智子が一人包丁で誰もいない空間に切りつけていた。智子には朝霧がＫに見え、彼に襲いかかった。朝霧は必死で彼女を制した。智子は淋しさのあまり見知らぬ男と関係を持ったと話し、その男から写真やビデオを送りつけられたと引出しのキーを取り出した。だが、引出しの中には何もなかった。 　朝霧は智子を強く抱きしめ、はじめて彼女への思いを素直に吐露するのだった。それを聞いた智子も辛かった胸のうちを告白した。二人はそのまま愛しあったが、その時ベランダにＫの手が忍び寄るのだった……。

監　督………橋　口　卓　明 企　画………福　俵　　　満 脚　本………橋　口　卓　明 撮　影………中　尾　正　人 照　明………岩　崎　　　豊 編　集………酒　井　正　次 録　音………シネ・キャビン 助監督………佐　藤　　　吏 現　像………東映ラボテック

智　子………佐々木　基　子 みさお………佐々木　ユメカ 朝　霧………本　多　菊次朗 Ｋ……………稲　葉　凌　一