清掃員のバイトをするマリはヤスオと勤務先のオフィスに置かれた現金を盗み出す計画を実行する。しかし地上に異変が起こり、居合わせた六人の男女はビルの地下に閉じ込められ…。
　前作「喪服の女　崩れる」が好評だった後藤大輔監督が密室で繰り広げられる異常な愛欲の世界をスリリングに描くユニークな欲情篇。奈賀毬子のほか、坂本ちえ、酒井あずさらが共演。

　フリーターのマリは清掃のバイト先で一千万以上の金が週末金庫に置かれていることを知り、恋人のヤスオにその金を奪おうと持ちかけた。女子高生のさゆりは死にたいと町をさまよい、公園の浮浪者に抱いて欲しいと懇願した。睡眠薬を飲み過ぎて意識を失った彼女を浮浪者はダンボールハウスに引き入れて犯そうとしたが、暴力団系の会社員の川田が酔っ払って「一千万くれ」とわめきながら現れ、浮浪者を追い出してさゆりを弄んだ。抱かれながらさゆりは彼を「お父さん」と呼んだ。
　金曜日。仕事場に忍び込んだマリは密かにヤスオをビルに侵入させた。その様子を川田とさゆりが見ていた。灯りのついたオフィスにはＯＬの圭子がいた。マリは彼女をガムテープで縛り上げ、倉庫に閉じ込めた。そこへ圭子と逢引の約束をしていた課長の勝呂が裏口から入ってきた。勝呂は圭子を助けようとするが、マリに見つかって乱闘となった。さらにドスを構えた川田とさゆりが現れた。川田は驚くヤスオに「金をよこせ」と切りつけた。実はさゆりは勝呂の娘で、父親に加勢してマリに噛み付いた。その瞬間、轟音と共に部屋が揺れ一同は床に投げ出された。未曾有の大地震が東京を襲ったようだった。
　土曜日。階段は瓦礫で塞がれ、六人は地下のオフィスに閉じ込められていた。川田は競馬で組の金を使い込み、穴埋めの為に強盗を企んだのだった。さゆりは父の勝呂と禁じられた関係をもち、それ以来生理が来ないので悩んでいた。勝呂はさゆりとの忌まわしい過ちを忘れる為に圭子と関係を持った。

そのことを知った圭子は激怒した。川田は圭子を脅してストリップをさせ、娘の前で勝呂とセックスするよう命じると自分はさゆりに挑みかかった。川田はマリも招きいれ、壮絶な５Ｐとなった。川田が果てた瞬間、マリは転がっていたテープホルダーで彼を殴り、失神させた。ヤスオは川田に抱かれたことでマリを責めるが、マリは冷たく突き放した。 　日曜日。圭子は勝呂が娘のことばかり心配するので癪に障っていた。ヤスオはそんな彼女に優しく接した。トイレで圭子は「マリはあなた利用しているだけ」とヤスオを誘惑した。その場で二人は激しく交わった。勝呂はマリの不幸な生い立ちを聞き、自分も金を持って逃げるつもりだったことを告白すると大人しく金庫の鍵を開けた。マリは勝呂が圭子もさゆりも捨ててこの金を持って逃げようとしたことを察し、金を袋に詰めた。ラジオからは地上の核汚染を告げるニュースが断続的に流れてきた。圭子はトイレの天井から屋上まで続くダクトがあるから、皆を殺して金を持って二人で逃げようとヤスオを誘った。ヤスオはマリを殺す決意をし、金を持った彼女と共に塞がれた非常口へ向かった。マリは襲いかかって来たヤスオをドスで刺した。 　翌朝。川田は圭子を捕まえ、揉みあううちにもろとも倒れた。激しく建物が揺れる中、父親とオフィスに残されたさゆりには生理がやってきた。血まみれで倒れていたヤスオは意識を取り戻し、マリに裏切りを詫びた。マリはヤスオの子供を身ごもっていることを告白した。二人は無理やり身体を重ねたが、ヤスオは息絶えた。マリはトイレの天井を抜け、屋上へと脱出した。街は廃墟と化し、上空からはミサイルのような轟音が鳴り響いた。マリが札束の入った袋を地上に投げると、そこにはあの浮浪者がいた。マリは「受け止められたら金を全部やる」と言い、屋上から飛び降りた。彼女の瞳はキラキラ輝いていた。

監督・脚本…後　藤　大　輔 企　画………福　俵　　　満 プロデューサー…池島ゆたか 撮　影………清　水　正　二 編　集………酒　井　正　次 録　音………シネ・キャビン 助監督………佐　藤　　　吏

マ　リ………奈　賀　毬　子 さゆり………坂　本　ち　え 圭　子………酒　井　あずさ ヤスオ………平　山　久　能 勝　呂………新　納　敏　正 川　田………江　端　英　久 浮浪者………松　木　良　方