徹のアパートを親友の佐伯が訪ねると連絡があった。かつては一緒にミュージシャンを目指した仲間だった。今の佐伯はキャリア官僚としてエリートコースをまっしぐら。だが現れたのは彼の恋人だという伸子だった。さらにヤクザや刑事が徹の前に現れ、佐伯がある事件に巻き込まれていることが判るが…。
　世間を騒がせる政治家の汚職問題を取り入れ、夢を追い続けた男二人の友情と、彼らをめぐる女たちとの愛欲を描いたセクシー編。アイドル路線の河村栞、奈賀毬子のほか、劇団出身の女優若宮弥生が競演。

　徹は40歳間近になりながら、若い頃からの夢を捨てきれず、売れないミュージシャンとして生きていた。
　そんなある日、かつて一緒に夢を追った親友の佐伯が久しぶりに彼を訪ねてくることになった。佐伯は官僚となって外務次官の秘書をしている。だが徹のアパートに現れたのは佐伯の恋人だという伸子だった。佐伯は結婚しており、伸子はまだ若いので、徹は援助交際の相手だろうと疑った。不審がる徹に対して伸子は佐伯と駆け落ちし、ここに来るように言われたのだと言い張った。そこへ伸子の携帯電話に佐伯からの連絡が入った。彼は「変な男が来ても何も喋るな」というだけだった。電話の向こうから波の音が聞こえたので、伸子は彼と初めて会った時と同じ海辺にいるのだろうと察した。人生が嫌になり死のうと思った時、そこに同じ目をした佐伯が立っていたのだ。

翌朝、徹はコンビニで食事を買って来た。伸子と話をするうちに、彼は佐伯と夢を追っていた頃のことを思い出した。当時の徹には依子という恋人がいた。彼のボロアパートで、隣に声が聞こえないように口を塞ぎながら依子を抱いた。そんな懐かしい思いにかられていると、ヤクザが佐伯を探して部屋を訪ねてきた。徹を脅すように凄んでいたヤクザは、アパートの外で見張っていた刑事の姿を見るやいなや逃げるように去り、愛人の実夏を車に乗せて海へと向かった。 　その後、ヤクザを追っていた刑事が徹の部屋にやって来た。徹は刑事の話を聞き、佐伯が外務省の汚職問題に絡んでいたことを初めて知った。テレビのニュースは事件の話題で持ちきりだった。伸子は真面目な佐伯は騙されて罪を被せられてしまったのだと話した。徹はやりきれなかった。 　徹は何度も佐伯の携帯電話に連絡を試みたが一向に繋がらなかった。伸子と話しながら徹は思わず彼女を抱きしめた。無理やり彼女を押し倒そうとするが、伸子はお腹に佐伯の赤ちゃんがいると叫んだ。そこへ依子が訪ねてきた。佐伯の妻は依子だった。彼女は徹ではなく佐伯を選び、結婚したのだった。依子は佐伯が来たら渡して欲しいと離婚届を差し出した。そして隠れていた伸子をキッと睨みつけると、黙って部屋を出て行った。 　伸子にせがまれて徹はギターを手に佐伯が好きだった歌を唄った。そこへ佐伯から電話がかかった。徹は一方的に彼に話しかけ、ギターの音を聴かせた。その時、電話の向こうから銃声が響いた。徹にはその場で泣き崩れること以外にできることはなにもなかった。 数ヶ月後。徹は伸子と海辺にやって来た。伸子のお腹には佐伯の子がいた。徹は持参したギターを海に流そうと思ったが出来ないと、伸子に渡した。伸子は黙ってギターを抱きしめた。

監　督………深　町　　　章 企　画………福　俵　　　満 脚　本………かわさきりぼん 撮　影………清　水　正　二 編　集………酒　井　正　次 録　音………シネ・キャビン 助監督………佐　藤　　　吏 スチール……津　田　一　郎 現　像………東　映　化　学

黒木伸子……河　村　　　栞 佐伯依子……若　宮　弥　生 実夏…………奈　賀　毬　子 佐伯…………なかみつせいじ 佐藤徹……かわさきひろゆき ヤクザ………入　江　浩　治 警官…………サトウ　オサム